市街地再開発事業開始にともない再開発組合の組合員としての権利義務行使に備えたい。
相談内容(依頼者の希望)
託也さんには、都内にひとり暮らしをしている母信子さんがいます。母信子さんは高齢で物忘れはありますが、認知症には至っていません。
母信子さんの自宅が市街地再開発事業区域に含まれることになりました。信子さんの住んでいる土地建物の所有権は新しく建築されるマンション内の物件に権利変換されるとの話です。
託也さんは、市街地再開発事業について、高齢な母信子さんがどれだけ理解できるか不安に思っています。
資産状況
- 自宅、土地、建物
- 預貯金
市街地再開発事業組合との調整を母信子さんの代わりに行うことが目的でなので、自宅土地建物を信託財産にすれば足ります。
今回の信託設計
信託財産 | 自宅、土地、建物と預貯金10万円 |
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受託者 | 委託者兼受託者:母信子さん 第一受託者:託也さん 第二受託者:託也さんの妹 |
特殊な条項 | 再開発により受益者が得る不動産は信託不動産とする |
受託者の行使できる権限について、再開発組合の設立同意及び組合員としての一切の権利義務を受託者の裁量で行使できること等再開発に関する権限を盛り込みました。
司法書士からのコメント(サポートを終えて)
市街地再開発組合の組合員としての権利義務の行使を、託也さんに委任する方法もあると思いますが、代理行使の度に、組合は、信子さんに権限授与の確認をするはずです。
今後、信子さんの判断能力の低下が進んだ場合、委任の有効性が問われる事態も想定できます。そこで、信子さんの判断能力の低下にかかわらず、託也さんがいつでも柔軟に権利行使できるように、民事信託という手法を採用することにしました。
市街地再開発施工会社の弁護士と相談の上、民事信託契約書を作成しました。都市再開発法という普段馴染みのない法律を通読することから始めた興味深い案件です。
市街地再開発は着工後数年かかります。受託者が最初から母信子さんに代わって権限行使できれば円滑に権利変換を受けることができます。
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