不動産の共有によるトラブルを防止するための家族信託の利用

司法書士 吉田 研三 (よしだ けんぞう)

親の死後、子供達が兄弟で実家の土地建物を共同で相続すること等により、不動産が共有となることがあります。

不動産の共有は、共有者同士の関係が良好な場合やお互いの利害が一致している場合は特に問題がありませんが、そうでなくなった場合に、不動産の処分等をめぐって家族間トラブルに発展してしまうことがあります。

このようなリスクを未然に避けるために、不動産の共有に代えて家族信託を活用するという手段があります。

この記事では、共有名義対策としての家族信託をご説明します。

不動産の共有とは

一つの不動産を複数人が共同で所有する場合、各共有者がその不動産に対して持っている所有権の割合を共有持分といいます。

例えば、被相続人である父親が亡くなり、3人の子供が土地を共有で相続する場合、長男は4/10、次男と三男が3/10というように持分を遺産協議分割等で定めたうえで相続します。

各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。

しかし、共有者単独では行えず、他の共有者の同意が必要な事項もあります。

例えば不動産を短期的な賃貸にだしたり、改良のためのリフォームをしたりするにあたっては、共有者の同持分の過半数の賛成が必要です。

また、長期の賃貸借契約を結ぶ、不動産を売却する、不動産に抵当権を設定する等、不動産の処分行為にあたるものについては、共有者全員の同意が必要になります。

共有不動産をめぐるトラブルとは

上述のように、共有不動産の処分等については、他の共有者の同意が必要になります。

処分方法について共有者同士の意見や利害が一致している場合はよいのですが、お互いのライフスタイルの変化や状況の違いにより必ずしも意見が一致しなくなると、不動産をめぐってトラブルになることがあります。

売却についての意見が分かれる場合

売却については全共有者の同意が必要となりますが、意見が一致しないケースも多くありえます。

例えば、共有者のうちの一人が、現金が必要になり不動産を売却したうえで、売却代金を共有者間で分配し、共有を解消したいと考えたとします。

しかし、別の共有者は現在その不動産に実際に居住しているため、不動産を手放したくないという事情があったとします。

こうした場合、住み続けたい共有者が、売却したい共有者の持ち分を金銭で買い取るという価格賠償の方法をとればトラブルなく共有が解消できますが、不動産は一般的に高額なため、残念ながら共有者に買い取る資力が十分になく、実現困難なこともあります。

また、売却すること自体は相互に合意していても、いくらで売るか、いつ売るかなど売却条件等でもお互いが合意していないと売却することができません。

共有不動産を誰が使うか問題になる場合

親の所有する不動産を兄弟で相続し、共有となった場合、実際にその不動産に住んでいない共有者は、第三者に貸して自分も賃料を受け取りたいという主張がでてきたり、固定資産税や相続税の負担をどうするかなどのトラブルが発生したりする要因にもなりえます。

二次相続により共有者が増えるとさらに意思形成が難しくなる

共有者の誰かが亡くなると、その共有者の相続人が共有持ち分を相続しますが、この二次相続の際の相続人が複数いた場合、その不動産の共有者はどんどん増えていくことになります。

人数が増えるほど共有者間の統一意思の形成は難しくなります。

また、共有者の一部が高齢化により判断能力がなくなった場合等も、不動産の円滑な処分は難しくなります。

家族信託を活用して不動産の共有を防ぐ方法

上述のような共有不動産をめぐる家族間トラブルの可能性を未然に防ぐために、家族信託を活用するという方法があります。

共有者の委託者が判断能力がある元気な状態のうちに、対象不動産を信託財産として設定したうえで、家族のだれかを受託者として指定し、委託者の意向に沿って不動産の管理、処分をしてもらいます。

家族信託では、名義上は受託者に土地の所有権が移り、意思決定も受託者に集約されますので、不動産共有の場合のように共有者の意思が合致せず、不動産が思うように活用、処分できなくなるような問題が生じません。

この場合、各共有者は、信託の受益者として指定されることにより、不動産賃料収入や不動産の売却対価等、不動産から生まれた利益を手にすることができます。

不動産を家族信託の対象とするメリットは、遺言では指定ができない二次相続対策としても利用できるという点にもあります。

被相続人から相続人である子供への相続を一次相続といい、その子供からさらに孫などへの相続を二次相続といいますが、遺言では二次相続以降については指定ができません。

この点、家族信託では信託契約の中で、受益者連続型信託にしたり、信託契約終了後の残余財産の帰属者を二次相続人等とすることにより、二次相続対策とすることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

不動産は高額かつ容易に分割ができない資産ですので、共有名義としてしまうと、後々共有者間でトラブルが発生しうるリスクがあります。

このリスクを避けるために、共有者全員と受託者が信託契約を結んで不動産管理を一元的にすることを検討してみましょう。

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