成年後見制度で認知症の方をお守りします

司法書士 吉田 研三 (よしだ けんぞう)

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成年後見制度とは?仕組みとでできること

成年後見制度は、法律行為をするための判断能力が十分でない人について、法律上の意思決定をサポートするための制度です。

まずは成年後見制度の概要と、成年後見制度によって解決できる問題について解説します。

成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」に分かれる

成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
両者の違いは、後見人(+保佐人・補助人)が裁判所によって選任されるか、それとも契約によって就任するかの点です。

法定後見は3類型(成年後見・保佐・補助)

法定後見には、成年後見・保佐・補助の3種類があります。
①成年後見、②保佐、③補助の順に、判断能力に関する障害の程度が重くなります。

法定後見は、本人のほか、配偶者・四親等内の親族・検察官などの申立てにより行われる、家庭裁判所の審判によって開始します(民法7条、11条、15条1項)。

成年後見 保佐 補助
適用対象 判断能力が欠けているのが通常の状態の場合 判断能力が著しく不十分な場合 判断能力が不十分な場合
代理権 ◎(財産に関するすべての法律行為) △(家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為のみ) △(家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為のみ)
同意権 -(代理権でカバー) ○(民法13条1項所定の行為すべて) △(民法13条1項所定の行為のうち、家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為のみ)
取消権 ◎(日常生活に関する行為以外の行為) ○(民法13条1項所定の行為すべて) △(民法13条1項所定の行為のうち、家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為のみ)
資格制限 あり あり なし
①成年後見とは

成年後見とは、法律上の判断能力を欠くのが通常の状態になっている人(成年被後見人)について、成年後見人に財産の管理や法律行為に関する包括的な代表権(代理権)を与える制度です(民法859条1項)。

成年後見人は、日常生活に関する行為(日用品の買い物など)を除いて、原則としてすべての成年被後見人による法律行為の代理権を与えられています。
この代理権を行使するにあたって、成年後見人は善管注意義務に基づき、成年被後見人のために行動することが求められます(民法869条、644条)。

もし成年被後見人が、成年後見人の同意を得ずに法律行為をした場合には、その法律行為は取り消すことが可能です(民法9条。日常生活に関する行為を除きます。)。

なお、成年後見人の独善的な行動により、成年被後見人の利益が害されてしまうことを防ぐため、代理権に以下の制限が設けられています。

  • 利益相反行為をする場合には、原則として家庭裁判所に対する特別代理人の選任の請求が必要です(民法860条、826条1項)。
  • 成年被後見人の居住用不動産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。
  • 成年後見監督人が選任されている場合、成年後見人が営業や民法13条1項所定の行為をするときは、後見監督人の同意を得ることが必要です(民法864条)。

成年後見が開始した場合、被後見人は弁護士・医師・会社役員・公務員などの職業に就くことができなくなります(資格制限)。

②保佐とは

保佐とは、法律上の判断能力が著しく不十分な人(被保佐人)について、保佐人に重要な法律行為に関する代理権・同意権・取消権を与え、被保佐人の財産を保護する制度です。

被保佐人は、成年後見人よりは判断能力の障害が小さいので、保佐人の代理権の範囲は、家庭裁判所が審判により特に定める行為に限られます(民法876条の4第1項)。

その一方で、一定の重要な法律行為については保佐人の同意が必要とされており、同意がない場合は法律行為を取り消すことが可能です(民法13条1項、4項)。

保佐が開始した場合、成年後見と同様に、弁護士・医師・会社役員・公務員などの職業に関する資格制限が発生します。

③補助とは

補助とは、法律上の判断能力が不十分な人(被補助人)について、補助人に個別の状態に応じて適宜代理権・同意権・取消権を与え、法律上の意思決定をサポートさせる制度です。

被補助人は、被保佐人よりもさらに判断能力の障害が小さいため、原則として単独で有効な法律行為をすることが可能です。
ただし、家庭裁判所が補助開始の審判を行う際に、法律行為の内容を指定したうえで、個別に補助人に対して代理権・同意権・取消権が与えられます。

補助が開始したとしても、成年後見・保佐とは異なり、被補助人に資格制限は発生しません。

任意後見は契約に従って実施

任意後見では、法定後見と同様に、後見人に対して被後見人の法律行為に関する代理権を与え、法律上の意思決定をサポートさせます。
ただし任意後見は、法定後見とは異なり、契約に基づいて開始するのが特徴です。

被後見人の判断能力が十分なうちに、判断能力が失われてしまった場合にあらかじめ備えるため、家族、友人、知人または司法書士・弁護士などの専門職との間で任意後見契約を締結することになります。
任意後見人の権限の内容は、任意後見契約の内容次第で決定されます。

成年後見制度によって解決できる問題

成年後見制度は、判断能力が低下した被後見人(被保佐人・被補助人)に代わり日常生活の金銭の管理や重要な財産の処分等を行ったり、本人が安心、安定した生活を送るための契約を行ったりすることで、本人を守るためのものです。
具体的には、成年後見制度によって以下のような問題を解決できることが期待されます。

日常の財産管理

判断能力が低下してしまうと、預貯金通帳や不動産の権利証等重要な書類を紛失してしまったり、年金、配当金等の収入金を正しく受給しなかったり、あるいは家賃、水道光熱費などの支払いが滞ってしまったり、日常の財産管理が充分に行えなくなってしまうことがあります。
後見人などが就任すると、本人に代わりこれらの行為を行うことで、日常の財産管理の問題を解決できます。

重要な財産の処分や遺産分割

定期預金を解約する、不動産を売却する、などの行為を行う際には、銀行や司法書士によって本人に対し、厳格な意思確認を厳格に求められています。この際、本人が充分に意思表示できない場合は、そのような行為が認められず、結果、財産が動かせなくなってしまいます。
成年後見制度では、本人判断能力が低下した本人に代わり、それらの行為を行うことで、財産の塩漬けを解消します。

身上監護

単身の高齢者で身寄りのない方などには、その人にとって適切な介護サービス、医療サービスを受ける契約等を行えていないケースがあります。
成年後見制度では、本人の生活や健康に配慮して、安心・安定した生活が送れるために、介護保険の認定申請、介護サービス計画の検討、介護サービスの締結などの身上監護を後見人などが行います。

詐欺被害の防止

判断能力の低下に乗じて、被後見人などにとって不利な条件による取引を持ちかける、詐欺まがいの行為が横行しています。
そこで、後見人などに法律行為に関する代理権・同意権・取消権を与えておけば、後見人などがその取引を認めていいかどうかを判断できるため、詐欺被害の防止に繋がります。

本人による浪費の防止

判断能力が低下した人は、高額な商品を買ってしまうなど浪費をしてしまう場合があります。
成年後見制度を利用すれば、浪費的な法律行為を後から取り消すこともできるので、被後見人などの財産を守ることが可能です。

周囲の親族による搾取の防止

判断能力の低下した人の周囲には、自分が利益を得ようとする悪質な親族がいるケースもあります。
成年後見制度を利用して、法的に後見人・保佐人・補助人を決めておけば、そのような悪質な親族から被後見人などが搾取される可能性は減るでしょう。

適切な取引の遂行

判断能力の低下した人を騙そうとする人も多いですが、その一方で本人にとってメリットになる取引もあります。
判断能力がないばかりに、そのような取引機会を逃すのはもったいないことです。
そこで成年後見制度では、後見人などが適切に判断を行い、被後見人などにとって利益となる取引については実行していくことが期待されます。

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成年後見制度のメリット・デメリット

成年後見制度は、うまく活用すれば被後見人などの利益となる一方で、いくつかのデメリットがあることに注意しましょう。

成年後見制度のメリット

前の項目ですでに解説したところをまとめると、成年後見制度のメリットは以下のとおりです。

本人の財産を守れる

判断能力の低下した人は、日常の財産管理が十分に行えなかったり、ときには詐欺・浪費・周囲からの搾取などに巻き込まれてしまうこともあります。
成年後見制度を利用すれば、後見人などが判断能力を補って適切な意思決定をサポートすることにより、被後見人などが財産を失うことを防止できます。

判断能力が低下しても必要な取引を行える

判断能力が低下した人は、詐欺などを見抜く能力と同じように、自分にとって望ましい取引を選び取る能力も低下してしまっていることもあります。
成年後見制度を通じて、後見人などが法律上の意思決定をサポートすることにより、被後見人などが適切な取引機会を掴める可能性が高まります。

成年後見制度のデメリット

一方、成年後見制度のデメリットとしては、費用面の負担と後見人などによる横領リスクが考えられます。

専門職が後見人に選任された場合は費用がかかる

親族を後見人の候補者として申立を行ったとしても、本人の財産状況や親族の関係性などにより、裁判官の判断により、司法書士や弁護士などの専門職が後見人に選任されることや、親族の後見煮の他に専門職の後見監督人が選任されることがあります。この場合には、裁判所が別途審判によって定める報酬が発生します。
本人の財産を守るための必要経費としてやむを得ない面がありますが、どのくらいの費用がかかるのかは事前に理解しておきましょう。

後見人などによる横領のリスクがある

法定後見や任意後見の場合、本人の財産を包括的に管理する権限が与えられており、残念ながら、その権限を利用して本人の財産を横領してしまう事件が後を絶ちません。
司法書士や弁護士などの専門職後見人による横領もありますが、横領事件の大多数は親族が後見人である場合に起こっています。
司法書士や弁護士など信頼できる専門職を後見人の候補者としたり、後見監督人の選任や後見制度支援信託の利用を希望するなど、申立の段階から横領を予防す仕組みの導入を視野に入れる必要もあるでしょう。

家族信託と成年後見の違い

成年後見に似たものとして、「家族信託」があります。
家族信託は、委託者の財産の管理・処分を第三者に委ねるという点で、成年後見に類似しています。

しかし、家族信託には成年後見制度とは異なる点がいくつかあるので、ニーズに応じて適切に使い分けましょう。

家族信託と成年後見の主な違いは?

家族信託と成年後見の主な違いは、おおむね以下のとおりです。

「受託者」か「後見人」か

家族信託の場合、財産の管理・処分による利益を受ける人を「受益者」、財産の管理・処分を受託する側を「受託者」と呼び、成年後見の場合とは呼称が異なります。
なお、家族信託の受託者も、成年後見の後見人と同様に、財産の管理・処分に関して善管注意義務を負います。

家族信託には「身上監護権」がない

成年後見の場合、後見人は被後見人の生活の維持・介護などに関する職務を行う「身上監護権」を有します。
これに対して家族信託の場合、専ら財産の管理・処分が信託の内容になるため、受託者に受益者に対する身上監護権は認められないのが特徴です。

家族信託の内容は「信託契約」によって決まる

家族信託は原則として、信託契約を委託者と受託者の間で締結することにより成立します。
信託の対象となる財産の範囲や、受託者の権限の内容などは、この信託契約においてすべて定められます。
この点、成年後見における後見人の権限内容は民法で決まっているので、家族信託の方が自由度の高い制度といえるでしょう。

成年後見と家族信託の比較表
成年後見 家族信託
法定後見 任意後見
目的 意思能力が不十分な被後見人の保護
→柔軟な財産管理 ×
委託者の資産を受益者のために適切に管理・運用・処分すること
→柔軟な財産管理 ○
契約時の依頼者の状態 判断能力不足 判断能力あり 判断能力あり
財産管理を代行する人 家庭裁判所が指定する成年後見人 任意後見人 受託者
権限 全財産の管理・法律行為・身上監護 信託財産の管理・運用・処分
効力発生時期 後見開始の審判 判断能力低下後 契約で取り決め
管理状況をチェックする人 家庭裁判所 家庭裁判所が指定する後見監督人 信託監督人(オプション)
取り消し権 あり なし なし
費用 専門職後見人が選任された場合、後見人報酬月額2万円~6万円発生 後見監督人報酬月額1万円~2万円発生 初期費用のみ
※当事務所では30万円~(税込33万円〜)

どのように家族信託と成年後見を使い分けるべきか?

上記のように、家族信託と成年後見にはそれぞれ特徴があるので、以下の方針を目安として使い分けるとよいでしょう。

財産管理のルールを柔軟に決めたい場合は家族信託

前述のとおり、成年後見人の権限内容は民法で決まっているのに対して、家族信託の内容は信託契約で柔軟に決めることができます。
そのため、財産管理のルールを柔軟に定めたい場合には、家族信託を活用するのがお勧めです(なお、家族信託の代わりに任意後見を利用する方法も考えられます)。

身上監護の必要性がある場合は成年後見

家族信託の受託者の権限には、本人にとってよりよい介護サービスを決定する、介護施設への入所契約の締結をするなどの身上監護は含まれていません。本人の身の回りの親族に、身上監護の担う適切な人がいない場合などは、成年後見を利用するとよいでしょう。

当事務所における成年後見にかかる費用

(任意後見にかかる費用)
見守り契約書作成 30,000円(税込33,000円)
任意代理契約書作成 30,000円(税込33,000円)
任意後見契約書作成 100,000円(税込110,000円)
公正証書遺言作成 70,000円(税込77,000円)
【実費】公証役場手数料 11,000円
※4枚を超える場合は、超える1枚ごとに250円
【実費】登記費用(収入印紙) 2,600円
【実費】法務局への登記嘱託料 1,400円
【実費】書留郵便料 540円
【実費】正本謄本の作成手数料 1枚250円×枚数

まとめ

・成年後見制度は、判断能力の低下した人の財産を守るために、第三者が法律上の意思決定をサポートする制度です。
・成年後見制度には「法定後見」「任意後見」の2種類があり、法定後見はさらに成年後見・保佐・補助の3種類に分かれます。
・成年後見と家族信託は、ニーズに応じて使い分けるか、または併用を検討しましょう。

成年後見人への就任を司法書士や弁護士に依頼すると、職務の公正を確保できるうえ、家庭裁判所への申立て手続きもスムーズに進められます。
親族の判断能力が低下しており、早急に対処する必要性を感じていらっしゃる方は、一度当事務にご相談ください。

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