障害を持つ子供のための家族信託の利用とは

司法書士 吉田 研三 (よしだ けんぞう)

障害を持つお子さんがいらっしゃる場合、親の生きている間は、親がその子の介護や経済的な扶養をしていくことができます。

しかし、多くの場合は親のほうが子供よりも先に亡くなるため、親は、親亡き後、障害を持つ子供の一生涯の生活をいかに守るかを考えておく必要があります。

この記事では、障害を持つ子供のための家族信託の利用についてご説明します。

親亡き後問題とは

身体的、精神的、知的に何らかの障害を持つお子さんを養育している場合、親が亡くなったあと、又は親自身の判断能力が低下したあとの障害を持つ子の生活がなりたたなくなってしまうのではないかという将来への不安を抱せる種々の問題を総称して「親亡き後問題」呼ぶことがあります。

「親亡き後問題」は親の死後ではなく、親が元気で十分に判断能力があるうちにあらかじめ対策を講じておくことが大切です。

福祉型信託の活用

福祉型信託とは

親亡き後問題の解決策の1つとして、信託制度の活用が挙げられます。

民事信託の中でも、高齢者や障害者の生活支援のための信託を特に福祉型信託と呼びます。

親亡き後、障害のある子供が財産管理に困らないように、障害のある子供を受益者とし、信頼できる親族又は第三者を受託者とした信託を組成します。

福祉型信託の具体的活用例

例えば、母(70歳)と3人の子供がおり、うち長男(40歳)が障害により、財産管理ができない状態にあるケースを想定します。

現在、母と長男は同居しており、母が長男の面倒をみていますが、自分が亡くなった後や認知症等になってしまった場合は、長女に長男の面倒を見てもらい、その代わりに、長女に多く財産を残したいと思っています。

こうした場合、母が亡くなった後の長男の生活を経済的に支援するために、母を委託者、受託者を長女、第一次受益者を母、母が亡くなった後は第二次受益者を長男とする信託契約を締結します。

こうすることで、母の死後も引き続き、長女が受託者として長男のために財産管理を行うことになります。

また、家族信託においては、委託者は信託終了後の残余財産の帰属先を指定することができるので、長男亡き後の残余財産を長女が承継するように信託契約で定めます。

成年後見制度の併用

親亡き後に医療介護福祉サービスを使用するには、介護サービス契約、入院契約、施設入所契約等様々な契約行為を伴いますが、信託は信託財産の管理の範囲でしか受託者の権限が及びません。

判断能力の乏しい障害者の、信託財産の管理以外の法律行為を代わって行うためには成年後見制度を利用する必要があります。

親のお金を障害のある子ども名義の口座にうつすのは得策ではない

信託を組成せず、遺言により障害者に多額の財産を相続させた場合や、贈与により障害者の保有する財産を増やした場合、その財産を管理するには、成年後見制度を利用することになります。

成年後見制度は被成年後見人のために、代理権を行使しますが、成年後見制度の目的が、被成年後見人の財産の保護であるため、成年後見人や裁判所が不必要と判断した出費を伴う法律行為は行えません。

その結果、受けたい治療や生活ができないおそれがあります。

また、遺言を作成できない障害者が、相続人なくして死亡した場合、特別縁故者がいなければ、使いきれなかった財産は国庫に帰属します。

そこで、家族信託を使って、障害のあるお子さんの存命中は、受託者によりお子さんの幸せな生活のために十分にお金を使ってもらい、お子さんの死後に残った財産は、受託者等お子さんの世話をしてくれた人に承継させたいという考え方もあるでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

親亡き後に障害を持つ子が経済的に困らず平穏な一生を送るためには、親が元気なうちに対策を講じることが必要です。

福祉型信託と成年後見制度を併用して、親亡き後も受託者や後見人による経済的支援を受けられる仕組みを整えておきましょう。

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