ご自身が亡き後の配偶者の生活を守る家族信託の活用法

司法書士 吉田 研三 (よしだ けんぞう)

ご自身が亡くなった後に、遺される配偶者の身上監護(被後見人の生活、治療、療養、介護などに関する法律行為を行うこと。)や財産の管理は誰が行ってくれるのだろうという不安を抱えていらっしゃる方は多いでしょう。

現在の日本社会では、高齢化、少子化、核家族化が進んでおり、高齢者の方が高齢者の方を介護する老々介護となっていることも少なくありません。

ご自身の死後も配偶者が、安心して生活できるようにするためには、成年後見制度や家族信託を活用するという選択肢があります。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分になってしまったときに、本人を保護し支援するために後見人を選任する制度のことをいいます。

成年後見人には、家庭裁判所から専任される法定後見人と、任意後見契約を締結する任意後見人の2種類があります。

成年後見人は、判断能力が低下した本人に代わって本人の財産を管理し、身上監護(本人の生活、療養、介護等に関する法律行為、例えば本人のために住居を確保したり、生活環境を整備したり、施設や病院などへの入所退所等の契約等をすること)を行います。

身上監護は、例えば本人のために住居を確保したり、生活環境を整備したり、施設や病院などへの入所対処等の契約等をすることです。

残される配偶者が認知症になった場合に備えて、信頼できるお子さん等を任意後見人にしておくという方法は有効といえるでしょう。

家族信託の活用

成年後見制度より柔軟な財産管理が可能

家族信託は、本人が元気なうちに、信頼できる家族等を受託者として、本人の意思に沿った財産の管理運用を実現する制度です。

成年後見制度における財産管理と比較すると、家族信託は以下2つの点において、より柔軟性の高い手段といえます。

一点目としては、成年後見人はあくまで本人の利益を守るための代理人であるため、家族にメリットがあっても本人の財産を減らすような行為ができません。

一方、家族信託であれば、ご自身の預金を減らす行為であっても、例えば節税効果を考えて、財産の組み換え等をすることもできます。

二点目としては、成年後見制度では、財産を減らさないように管理することが主目的となるので積極投資はできません。

一方、家族信託であれば、本人の意思にしたがって、投資用不動産を購入して賃貸収入を得ていくなど財産の積極活用もしていくことができます。

配偶者に残したい特定の財産がある時にも有効

たとえば、配偶者の方の他にも相続人がいるときに、配偶者に特定の財産を相続させたいときにも家族信託は便利な制度です。

夫婦の間に子供がいれば、配偶者と子供のみが相続人になるため実の親子間でのトラブルは比較的少ないかもしれませんが、子供がいない場合は本人の親兄弟も相続人となるため、ご自身が亡きあと、配偶者と実家の家族が相続をめぐってトラブルとなることを懸念される方もいるでしょう。

こうした場合、例えば、自宅などを確実に配偶者に相続させたい場合などは、その自宅を信託財産にいれておくことで、遺産分割協議の対象から外すことができ、確実に配偶者に相続させることができます。

家族信託と成年後見制度の併用がおすすめ

以上から、自由度が高い財産管理ができる家族信託を使いつつ、成年後見制度と併用していくことが、遺される配偶者の生活を守るために有効な手段であるといえるでしょう。

夫婦の間の信頼できる子供を任意後見人として、配偶者の身上監護や信託財産に含めなかった財産管理は成年後見制度に委ね、信託財産の管理については家族信託を活用という方法となります。

併用の留意点

実際問題として、委託者ご本人が、家族信託の受託者になってほしい人と、残される配偶者の任意後見人になってほしい人は、同一の人物となることが多いです。

具体的には、委託者のご長男やご長女等信頼できるお子さんであることが多いでしょう。

しかし、家族信託の受託者と任意後見人を同一人物が兼ねることは望ましくないとも考えられています。

家族信託では、受益者は信託財産の利益を受ける立場であるとともに、運用を行う受託者を監督する立場にあります。

受益者である高齢の配偶者が認知症となってしまうと判断能力がなくなり、受託者の監督は事実上できなくなります。

この際、任意後見人が受託者と別に存在すれば、任意後見人が受託者を監督できますが、任意後見人が受託者を兼ねている場合、その監督が意味を成さないものとなってしまいます。

こうした事態を避けるためには、信頼できるお子さんが2人以上いる場合は、受託者と任意後見人にそれぞれなってもらう、信頼できる専門家後見人をつけるなどを検討したほうがよいでしょう。

家族信託は比較的生まれてから新しい制度ですので、信託開始時には専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ご自身が亡くなった後の配偶者の身の回りのことや財産管理が心配な場合、成年後見制度と家族信託の併用を検討してみてはいかがでしょうか。

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