認知症の進行に備えて、医療費、介護費用を確保するための事例。
相談内容(依頼者の希望)
民子(30代)さんは現在夫と子供2人暮らしです。民子さんには遠方で一人暮らしをしている父信男(70代)さんがいます。兄は1人いましたが既に亡くなっており、亡くなった兄には子供が2人います。
最近、父信男さんがごく軽度の認知障害と診断されました。民子さんは、父信男さんの認知症の進行に備えて、医療費、介護費用を確保したいと考えています。
資産状況
- 自宅マンション
- 上場株式9700万円相当
- 預貯金1000万円
父信男さんの財産の構成で特筆すべきは上場株式の多さです。それに比べれば預貯金が少ないといえます。上場株式を信託財産に含めても良いのですが、株式は換金しなければ、医療費等として利用することができません。
株式の換金のタイミングは判断能力を正常に備えていたとしても判断が難しいものです。換金のタイミングを誤れば、結果、相続財産が減り、他の相続人から非難されるおそれがあります。
また、将来施設入居を考えた場合に、管理上住まなくなった自宅を処分する可能性に備える必要があります。
今回の信託設計
信託財産 | 自宅マンションと預貯金5,000万円 |
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受託者 | 第一受託者:民子さん 第二受託者:民子さんの夫 |
信託の終了時期 | 父信男さん死亡のとき |
残余財産の帰属先 | 受益者死亡による信託終了の場合は、受益者の相続人または遺言により指定された者 |
父信男さんに契約締結前に上場株式を一部売却してもらい預貯金を増やすことにしました。
株式をすべて換金しなかった理由は、株式投資が父信男さんの趣味であり、全部換金しなくても、父信男さんの将来の医療費・介護費用を賄うことができると考えたためです。
司法書士からのコメント(サポートを終えて)
父信夫さんはごく軽度の認知症でしたが、今後、娘の民子さんに迷惑をかけることになるだろうと心配しておられ、民事信託契約の締結に積極的でした。
また、娘の民子さんも民事信託についてある程度知識がおありで、当事者双方の意欲の高い案件でした。
民子さんご夫婦はごく一般的な共働き家庭で、これからご自身のお子さんの成長に伴って出費の増加が見込まれます。
民事信託を締結したことにより、その医療費・介護費を父信夫さんの財産から出費できるようにしたことで、父信夫さんに十分な医療・介護を受けさせることができるようになりました。